特定非営利活動法人  藤枝ももはなの会

活動内容

ももはな作文集は、障がい児のきょうだい達が書いた作文集です。

【藤枝ももはなの会】は、中学生にこの作文を、元アナウンサーに朗読していただく活動をしています。

この作文集には、障がい児・者を兄弟姉妹に持つ子どもや大人が、障がい者と暮らす悩みや葛藤を抱えながらも、共に支え合いあい、生きて行く喜び、障害に向き合うことで感じた意味などを実名入りで綴られています。

元アナウンサーの語られる心がこもった優しい言葉は、生徒の心にしみこみ、素直に感動するようです。

差別のない社会、いじめのこと、家族のこと、感謝する心などを考える機会にもなっているようです。

 また、近年、携帯やスマホ、SNSの利用により、コミュニケーション不足が叫ばれていますが、この朗読を通して直に相手と話したり、音声で伝えることの大切さ、言葉の大切さを感じているようです。

 (感想文より一部引用いたしました)(写真 NPO法人 藤枝ももはなの会代表 南條怡三(なんじょうよしみつ)

財団法人「浜松こども園」故荒岡憲正理事長のご挨拶

発行者のあいさつ

 

財団法人

浜松こども園理事長

 故 荒岡憲正

 

空の雲と米津浜の白砂、松の緑も三十前と少しも変わらないように見えますが、

世の中は大きく動きはじめています。

 思い返しますと、行政をはじめとして世の中全体が、発達障がいを持って生まれた人たちに対して、理解を持てない時代でした。熱海市役所で市民相談室長を務めて居りましたとき、座敷牢に閉じ込められた障がい児に出会い強い衝撃を受けました。すぐにボランティアを募り一日保育を開始、受け入れ先の無い障がい児たちが月に一度の保育を待ちわびる姿が報道されたこともあり、その時の胸の熱くなる喜びが、障がい者福祉への入り口だったと思います。

 

 以来五十年、三幸協同製作所、小羊学園を経ておおぞらの家の創設にかかわり、その中で早期療育の必要性を感じて浜松こども園を拓いた訳ですが、今年は三十五年目を迎えます。

浜松こども園から、千人を超える子等が巣立っていきました。

 開園以来、医療と療育を組み合わせ「身を尽くして、心を尽くして、手づくり」をモットーに療育事業をすすめて参りました。

将来設計を視野に入れた生活支援であり、自立に向けた取組みですが、永い間、胸の奥にさざ波を立てながら仕舞われたままになっているものがありました。それが同胞(きょうだい)への想いです。

 

平成二十年の暮れ、独立行政法人に申請してあった今回の事業について助成金の認可が下りたのは、理事長が病に倒れて

一ヶ月 後、平成二十一年三月のことでありました。三十名の実行委員会を立ち上げてスタートした後、作文が仲々集まらない

不安な時期がありました。しかし、届いた作文は三十五編。どの作品も我慢をし、苦しみ、その中で年月をかけて障がいのあるきょうだいを理解し、どう御自身を育てていったか素直に書かれて居り、胸を打つものばかりでした。

本当に、よくぞ書いて下さいました。このかけがいの無いごきょうだいからのメッセージが、地域社会により深く理解して頂くための第一歩、強い力になると信じています。

 「いろいろな事があるけど、頑張っているね。一緒に歩いていこうね。」という温かい眼差しと共生の輪が広がることを、

切に願っております。

 更にこの事業が、地域の啓発と地域貢献の役割りを果たすことが願いですが、同時に、ごきょうだいの気持ちに

どのように寄り添っていかれるか、これからの大きな課題になることは間違いありません。

 共生の優しい桃の花があちらこちらに咲き、誰もが幸せな気持ちを分かち合える世の中になることを夢みて

筆を置くことに致します。

 

 


 藤枝市教育委員会学校教育監 梶川佐知子さんの活動についての感想文です。

 これからの共生社会に生きる子供たちにとって、障がいのある人への理解は勿論のこと、障がいのある人を支えるご家族の思いも理解することは、とても意味のあることだ考えます。

 「ももはな」の作文集は、障がいのある人を家族に持つ、小中学生と同じ世代の子供たちの作文集ですので、その作文の朗読を聞いた子供たちは、自分を向き合いながら、障がいのある人やその家族の、苦労や前向きな生き方に共感したり尊敬したり、今まで考えたことのなかった問題に気づいたり、あらためて自分自身がおかれている環境に感謝の気持ちを持つたことができたり、など、心が豊かに耕され成長しています。

 子供たちの中には、作文の筆者と同じように障がいのある兄弟を持つ子供もいます。そういう子供は、普段は自分の兄弟に対する気持ちを表に出すことなく生活していることが多いのですが、作文の朗読を通して自分の気持ちを素直に表現できることの大切さを感じたり、兄弟の愛しく思う気持ちを再認識したりしています。いわゆる「ヤングケアラー」と言われるこの様な子供の存在は、大人からは非常に見つけにくいわけですが「ももはな朗読会」を聴いた子どもたちの感想から学校の職員が気づいてあげられるケースもありました。

 この朗読会は、元アナウンサーの方々が朗読してくださるため、滑らかで感情のこもった語り口により、更に深く子供たちの心に響くことになり、学校から大好評を得ております。子供たちの心の成長や健全育成にとても有意義な活動でありますので、この活動が末永く続くことを願っております。

 

 

 

浜松市長 鈴木康友氏のメッセージ

 第一回障がい児のきょうだいの想い作文発表事業が行われ、関係各位のご尽力により、記念すべき作文集

「ももはな」が刊行されますことに、心からお祝いを申し上げます。

 また、厳正な審査を経てみごと受賞された皆さまおめでとうございます。

 この文章に収められている、どの作文からもきょうだいや家族に対する想い、家族の支えや家族の大切さなど自分の考えが勇気をもって、素直に述べられており、私も強く感動を受けました。そして、家族の絆をあらためて認識させられた、とてもすばらしい作文でした。

 

 障がい児のきょうだいの会は地域社会の中で育ちにくく、全国的にみて大きく発展しているところは少ないと言われておりますが、今回浜松市でこのような事業が展開されたことは大変よろこばしく、これを機に、浜松こども園の取組が障がい児のきょうだいの会の発足や、地域福祉への理解、啓発につながることを期待するところでございます。

 

また、これからもこの事業に携わった皆さまが積極的に社会参加をされ、地域福祉の向上に貢献をされるよう

念願するものでございます。

終わりに、この作文集が多くの方に読まれ、障がい者の福祉に対する意識の高まりに役立つことを祈念し祝辞といたします。

 

 静岡県手をつなぐ育成会会長 小出隆司さんのメッセージ

同胞桃花賞の審査委員のお話をいただいた時には、戸惑いがありましたが、これも親の会(手をつなぐ育成会)の立場上、使命と思いお受けいたしました。また、作文集を作成にあたり、しょうがいを持つひとりの親として書かせていただきました。  

 我が家には、社会人一年生として作業所に通う自閉症の娘と、兄がおります。知的障がいは、生まれながらの障がいであります。我が子に障がいがあることを告げられた時の苦しみには、それまで自身が無意識に持っていた障がいに対する目線が(心)が、わが子、わが家に注がれることへの現われであり、恐れを伴った深く暗い不安は、親のいまでの育ちのなかでの経験を基に、わが子の将来を描けないことによるものであったように思います。

 

生活におきましては、荒岡理事長が熱海市役所に在職中に出会った、家の中に隔離された障がい児に強い衝撃を受けられた出来事、これは、子の安全を確保し家族が生活をしていくため親がそうせざるを得ない実情があったと思います。障害福祉がほとんどない時代の話として述べておられますが、今でも障がいのある人を持たない人たちが見たら当然そのように判断されることも多くあるのではないでしょうか。

 そのような状況において、家族の中のきょうだいに対して、親は、わが子に大きな負担とならないようにと、自分の人生を生きてくれと言っております。しかし、きょうだいの成長の過程において、その時々の環境に対する心配はするものの、わが子の思いや悩みを聞くことへのとまどいがあり、向き合う事がなかったように思います。

 今回のきょうだいの作文の募集に対しても、妹のいる家庭を離れ、ひとりで学生生活をしている兄に知らせることはしませんでした。そのような親である自分の前に置かれた三十五編の作文は、小学生から成人までいろいろな世代のきょうだいの素直な心に触れた思いであり、読み返すうちにその時々のわが子と重ねている自分がありました。そして、障がいのあるきょうだいや親と向き合っている子どもの心に新鮮な印象を受けるとともに、きょうだいや家族を思う暖かで力強い勇気を感じました。私も親としてまだまだ超えなければいけないものが、沢山あることを改めて思いました。このような機会を与えていただいたことに感謝をいたします。

 

 

 

 元浜松市教育長 河合久平さんのメッセージ

 このたび、浜松こども園では、「心身障害児の教育・医療など社会的自立のための総合的福祉」を目指してきた三十年余の実績を踏まえ、荒岡憲正園長の悲観的構想のもと、『同胞(障がい児・者のきょうだいの想い)桃花賞』がスタッフの熱心な参画・関係諸団体の積極的な協力、そして何よりも該当参加者の勇気あるご賛同により、三十五編の貴重な体験感想文が寄せられて立派に実施できましたことは、大きな喜びで、関係皆さんに深く感謝申し上げます。

 応募作品の内訳は、小学生六編・中学生八編・一般の部二十一編で、年齢は小学一年から五十四歳の主婦と幅広く、中には遠く他県から寄稿されました。障害の内容には種類・度合いなどそれぞれ違いがありますので、一様の評価は難しいが、“共に生活した切実な想いと素直な表現”には全く優劣がつけにくく、感銘深い立派な作品ばかりでした。 

 とりわけ“幼い一年生が習いたてのしっかりした平仮名で四年生の姉と共に弟想いの心情を素直にまとめた心温まる姉弟愛・家族の絆”また”「ノーマライゼーション」の意味を考え、真剣にその表現を願う中学生の着想”、映画1/4の奇跡」の紹介や「体内記憶」の解説”、さらに”施設・設備・社会環境に基づいた真摯な感想で、今後への得難い教訓・対策が述べられ、まことに意義深いものと感じました。    

思うに、全編を通して”語り訴えられたこと”は、〈障害も個性の一つであるという社会的認識の徹底〉と〈障害に応じた医療・教育及び自立施設の完備が急務〉だという切実な想いでありました。

 いずれにしても、物心両面で差別意識を根絶し、「共に学び、共に働く体験学習の深化」を図り、「共感・共生の生活情」を養い、〈障害差別の壁を取っ払い、両者があってこそ真の社会は成り立つ〉という【ノーマライゼーション】の共同体は福祉の基本理念であり、その実現は人類社会の至上命題だということを痛感いたしました。

 荒岡先生は、春を告げる花の中で”ぽっと咲き”まわりを暖かくしてくれる”桃の花が一番好きだそうで、この賞のタイトルにしたとのことです。思うにその心は、これまでの《この子らに光を》という真の人間尊厳の世の中を切に願ってのことではないでしょうか。

                    

(社会福祉法人)福祉同友会理事長 浅田常夫さんのメッセージ

 今回、作文の審査委員として、この活動に参加させて頂きましたが、私自身、重度身体障害者であり、私には五歳離れた妹が居ります。だからこそ、私には障害者を持った家族の有り様が良く理解できるのです。

 私が幼い頃、ちまたには多くの障害者への偏見や差別等がありました。

 おさないころ、私を乳母車に乗せ、妹と母が乳母車を押して街に買い物に行った時など、人々は乳母車の中の私を見て、自分の子供に対して「悪い事をすると、あの子のようになるんだよ」と言われたり、変なものを見るが如くみられたりもしました。

 そんな時きまって私の妹は、言ったり見たりした人達を睨み返していました。

 妹は幼い時から「お兄ちゃんが障害者として生れてこなかったら、私が障害者として生れて来たかも知れないから、お兄ちゃんの面倒は私が一生みるよ」と言ってくれました。

 その言葉に甘えて生きて来たのが今の私であり、私がもし健常者として生れて来て、妹が障害者として生れて来ていたとしたら、妹と同じ事が言えるかどうか、私には自信がありません。

 でも、親の育て方によって、障害を持つ兄弟姉妹の生き方は、大きく変わってくるものと思われます。

この様に有意義な「同胞桃花賞」に関わって下さった多くの皆様に御礼申し上げます。

 

 

 

朗読会の様子

教育委員会の方々も参加

教室内での朗読

 朗読会の様子